令和元年東日本台風で顕在化した広域避難の様々な課題等を踏まえ、首都・東京の大規模洪水等による壊滅的な被害の発生を回避できるよう、国と東京都が連携した防災まちづくりを強力に推進していくための『災害に強い首都「東京」形成ビジョン』(以下「ビジョン」という)が令和2年12月に公表されました。
このビジョンでは、水害対策の基本的な考え方として、治水施設の整備を加速化するとともに、避難行動の実効性を高め、また、早い段階からの避難が出来なかった場合においても、命の安全と最低限の避難生活水準を確保できる避難場所にもなる「高台まちづくり」を推進していくことが示されました。
ビジョンにおいては、高台まちづくりの具体の整備手法として、以下の3つが示されています。
➀建築物等(建物群)による高台まちづくり
②高台公園を中心とした高台まちづくり
③高規格堤防の上面を活用した高台まちづくり
この高台まちづくりでは、浸水時には緊急的な避難場所や救出等の活動拠点として機能することを想定しつつも、平常時には賑わいのある空間、公園、良好な都市空間・住環境を提供し、いざ災害という時には高台公園や高規格堤防の上面から道路や連続盛土等を通じて浸水区域外への移動が可能となる機能が求められています。
高台まちづくりの全国への展開に向けては、水害リスク軽減の観点からの高台まちづくりの優先的な整備地区を定めるとともに、事業実施体制面の強化、事業実施の根拠となる法令や通達などの制度面の強化とそれに付随した財政支援の強化、さらには地元合意形成に向けた普及啓発の強化など、取組むべき課題は多々あります。
当研究所では、これら課題の解決に寄与する施策や技術の研究を今後も進めてまいります。
<参考>機関誌「RIVER FRONT」での高台まちづくりに関する特集記事
●「RIVER FRONT」Vol.97(2023年9月発行)特集:命を守る高台まちづくり~低平地で取組む流域治水~
<関連文献>
首都東京ゼロメートル地帯 高台まちづくり「命山」計画の提案
土屋信行・渡邊康示・阿部徹・水草浩一・竹内秀二・和田彰,リバーフロント研究所報告 第31号,2020.
高規格堤防整備と連携した高台まちづくりの避難場所としての活用の可能性の調査研究
渡邊康示・土屋信行・阿部徹・水草浩一・和田彰,リバーフロント研究所報告 第31号,2020.
高規格堤防上面を活用した高台まちづくりの避難空間としての効果に関する調査研究
渡邊康示・土屋信行・水草浩一・竹内秀二・諸星晃,リバーフロント研究所報告 第32号,2021.
命を守る水害に強いまちづくり~河川沿いの高台まちづくり優先整備地区選定手法に関する研究~
和田彰・土屋信行・勢田昌功・諸星晃・黒木健二・森吉尚,リバーフロント研究所報告 第33号,2022.
自区内避難に必要な避難高台に関する調査研究
土屋信行・諸星晃・藤井明子・黒木健二,リバーフロント研究所報告 第33号,2022.