河 川 の 概 要 と 研 究 成 果 |
河川生態学術研究会は、標津川、十勝川水系、岩木川、多摩川、千曲川、木津川、五ヶ瀬川水系の7つの河川及び水系を対象とした研究を実施してきている。 |
1994年度は研究計画と研究方法、対象河川の選定などを行い、1995年度から多摩川と千曲川、1998年度から木津川、1999年度から北川(2009年度から範囲を五ヶ瀬川水系に拡大)、2004年度から標津川、2006年度から岩木川でそれぞれ研究が開始された。また、2011年度からは、新たに河川砂防技術研究開発公募(国土交通省)に選定された研究グループが参加する形となり、2011年度から十勝川水系、2012年度から斐伊川水系の研究が加わった。 |
このうち、2009年度に木津川、2011年度に標津川、岩木川、2012年度に五ヶ瀬川水系での研究が終了しており、研究成果を研究報告書として、それぞれとりまとめている。 |
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各 河 川 の 概 要 | |
●十勝川水系 | |
十勝川は、大雪連峰十勝岳(2,077m)に源を発し、音更川・札内川・利別川など多くの支流を合流しながら広大な十勝平野を南下し、太平洋に注ぐ一級河川である。 これまで様々な治水対策が実施されてきたが、未だ整備途上にあり、ダム建設が実施され、流下能力確保のための河道掘削等が計画されている。これら治水対策は、少なからず河川の環境に影響を与えており、特に、上流と下流の連結性はダムによって分断され、河川と氾濫原・周辺農地との連結性は、築堤や河道の直線化等によって失われ、河道の樹林化も進んでいる。 |
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●標津川 河口~共成地区【2011年度終了】 | |
標津川は標津岳(1,061m)に源を発し、オホーツク海へ注ぐ延長77.9kmの二級河川である。 かつては蛇行を繰り返す湿原豊かな河川だったが、1932年より洪水氾濫を防ぐため河道の直線化等が進められた。2000年度より自然復元型川づくりとしての取り組みが開始され、おもに河口から自然復元試験地のある共成地区において、河道の変化や生物の育成・生息環境などに関する調査研究が実施されていることから、調査地区として選定された。 |
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●岩木川 十三湖~武田地区・車力地区【2011年度終了】 | |
岩木川は、青森県西部の日本海側に位置し、その源を青森・秋田県境の白神山地の雁森岳(標高987m)に発し、弘前市付近で流れを北に変え、平川、十川、旧十川等の支川を合わせて津軽平野を貫流し、十三湖に至り日本海に注ぐ、幹川流路延長102km、流域面積2,540km2の一級河川である。 十三湖は岩木川からの流入を受ける一方、日本海からの交番流を受ける汽水湖であり、全国的にも有名なヤマトシジミをはじめ、ワカサギやマハゼ、シラウオといった汽水・海産魚類などの他、淡水性の魚類も数多く生息している。 十三湖への流入口より10km区間のヨシ原にはオオセッカやオオヨシキリ、コヨシキリ等の鳥類やマークオサムシ等の昆虫類が生息し、特にオオセッカは、全国的にも貴重な存在で、国内で約2,400羽が生息している内の約300羽がこの岩木川で繁殖している。この地域ではヨシの刈り入れが行われるとともに、2004年までは、品質の良いヨシ生産のために火入れも実施されており、オオセッカの良好な繁殖環境が維持されている。 |
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●多摩川 多摩川中流域の本川と支流 | |
多摩川は山梨県笠取山(1,941m)に源を発し、秋川、浅川、大栗川、三沢川、野川、平瀬川などを合わせながら東京都西部から東京都と神奈川県の都県界を流下し、東京湾に注ぐ一級河川である。日本有数の都市河川で、河川の自然環境に関する調査・研究等が盛んでデータの蓄積度も高い。 これまで多摩川グループでは永田地区、多摩川大橋地区を中心に研究を行ってきた。2009年度より研究目的を、流域の特性や人間の活動が直接・間接的に河川生態系に与える影響を明らかにして、地域特性や流況に合致した河川の生態学的管理のために寄与できる研究成果を挙げることとしたため、典型的な都市河川である多摩川中流域の本川、およびその支流が調査地区として選定された。 |
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●千曲川 鼠橋地区・粟佐橋地区 | |
千曲川は甲武信ヶ岳(2,475m)に源を発し、長野市において犀川を合わせて北流し、新潟・長野県境で信濃川と名を改める。信濃川は一級河川で、日本で最も流路延長の長い河川である。 鼠橋地区は坂城町に位置する鼠橋を中心とした約2,000mの区間で、上流側は上田市域となる。河原は中流区間特有の砂礫で構成されており、蛇行を繰り返しながら瀬と淵を形成する中流域の景観が顕著であることなどから調査目的ⅡとⅢを中心課題とする調査地区として選定された。また、粟佐橋地区は千曲市粟佐に位置する粟佐橋から下流を中心とした約1,500mの区間である。平均河床勾配が1/1,000程度、代表粒径は40mmで、複列砂州と交差砂州の混在領域となっている。この区間において試験掘削が実施されることから、掘削による人為的インパクトが生態系に与える影響を把握することを目的として、調査地区に選定された。 |
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●木津川 京田辺地区【2009年度で終了】 | |
木津川は布引山脈(756m)に源を発し、宇治川・桂川と合流して淀川となる一級河川である。流域には風化花崗岩地帯が多く、中流域には交互砂州が形成されるなど、砂河川としての特徴が顕著である。 変動が激しい砂河川の生態系などを把握するため、調査地区として選定された京田辺地区は、木津川の中流域、河床勾配1/1,000で交互砂州が発達しているセグメントの代表的リーチで、城陽市と京田辺市の境界に位置する延長約2,500mの区間である。 |
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●揖斐川 | |
斐伊川は、島根県と鳥取県の県境に位置する船通山(1,143m)に源を発し、途中、大馬木川、阿井川、三刀屋川等の支川を合わせながら北流し、出雲平野でその流れを東に転じ、宍道湖、中海を経て境水道を通じて日本海へ注ぐ、流域面積2,540km2、幹川流路延長153kmの一級河川である。 中海・宍道湖は大橋川を挟んだ日本でも有数の汽水湖で、それぞれ塩分濃度が異なる連結汽水湖であり、宍道湖ではフナ、コイなどの淡水魚、シンジコハゼ、シラウオなどの汽水性の魚、中海ではコノシロ、スズキなどの海水魚が多い傾向にある。ヤマトシジミは宍道湖の代表的な漁業資源で、その漁獲量の多さは塩分濃度がヤマトシジミの生息環境に適しているためと言われている。 中海・宍道湖は全国でも最大級の水鳥の渡来地で、ガン・カモ類を中心に約10万羽が生息し豊かな生態系が形成され、2005年11月ラムサール条約に登録されている。 |
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●五ヶ瀬川水系 五ヶ瀬川・大瀬川・北川 【2011年度終了】 | |
五ヶ瀬川流域は、年間平均雨量が2,500mmであり、全国平均より850mm程度多い地区である。1997年9月の洪水及び2005年9月の洪水では、大規模な被害が発生し、1997年に北川等が、2005年に五ヶ瀬川、大瀬川等がそれぞれ、激特事業に採択され、短期間で大規模な河川改修が実施された。この自然及び人為インパクトが生態系に与える機能や影響を把握することを目的に、北川では1999年から調査地区に選定され、様々な生態学的知見の蓄積が行われてきた。五ヶ瀬川・大瀬川においても激特事業が実施されたことから、北川で得られた知見を活用するとともに、両河川の類似点、相違点を明らかにすることで河川生態系への理解を深めるため、調査地区として選定された。 | |