多摩川 永田地区・多摩大橋地区
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永田地区はかつては中流区間特有の砂礫の河原であったが、
近年は外来種のハリエンジュをはじめとする木本や大型草本の繁茂が著しい。
また、多摩大橋地区は中下流部で初めて大規模な下水処理水が放流される。
それぞれの地域で河道修復や水質に関する研究が行われており、
以下のような研究結果が得られている。
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●永田地区の河道修復事業とモニタリング
・研究は1996年より開始された。この結果、永田地区の扇状地河川特有の
平坦な礫河川は1965年まで続いた大量の砂利採取と上流部の治水・利水施設による
土砂供給量の減少によって複断面的な河床へと変わり、
流量の安定化などにより、高低水敷の安定化が進んだ(下図.永田地区の変化参照)。
このため、河原の減少や高水敷の形成と安定化に伴い、
急激に生物の生息・生育環境が変化し、高水敷は樹林化が進み、
従来からのカワラノギクやカワラバッタなど固有な生物種は減少し、
多くの外来種を含む生物種が侵入した。
このような河川敷の環境上の課題や、左岸の河床洗掘、
河道内の樹林化に伴う流下阻害・流木化の恐れなどの
治水上の課題が明らかになった。
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・これらの研究成果から、「礫河原の再生」の計画をたて、高水敷の掘削、
ハリエンジュの除去と表土の剥ぎ取り、カワラノギクの緊急的保全策としての
礫河原造成と播種の実施などの河道修復事業を実施した(下図.礫河原の再生参照)。
その後、モニタリング調査が実施されており、カワラノギクの大幅な増加、
カワラバッタやイカルチドリなどの河原生物の増加などが確認されている。
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永田地区の変化 |
礫河原の再生高水敷のハリエンジュを除去して掘削した |
造成した礫河原へのカワラノギクの播種(左)とカワラノギクの開花のようす(右) |
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●多摩大橋地区の調査
多摩大橋地区左岸は処理場排水が流入し、河川水質が大きく変化する場所である。
水温が異なる処理水は本流に流入した後しばらくは
河川水と混合することなく流下していることが化学分析の結果確認された。
そのため、流入の生態影響は下流側の左岸と右岸で異なっていた。
栄養塩濃度が高い処理水の流入は川底の付着藻類の量と種類を変え、
有機汚濁を引き起こす原因となっていた。
また、処理水の殺菌に使われる塩素や高水温の影響も底生動物の種類組成を変えている。
流入水中の微量物質の生物濃縮過程を含め、生物地球科学的な動態解析が共同研究によって進められている。
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下水処理水の流入 右側の黒くみえる部分が処理水
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